新学期がスタートして、もうすぐ一ヵ月ですね。
この時期には、いろいろと環境の変化のある
先生もきっと多いことでしょう。
引っ越しをする、教室を移転する、職場の異動、
新しい仕事をスタートさせる、仕事を辞める…
これまでの自分とは違う場所に身を置くことに、
期待や不安を抱えている先生もいらっしゃるでしょう。
私は、新しい仕事を始める上で最も大切なのは、
「仕事の辞め方」
ではないかと思っています。
…さて、どういうことでしょうか?
■わかりやすい「バイト」で考えてみる
たとえば、あなたが雑貨屋でバイトをしている、
と考えてみましょう。
他のバイトの人も、社員さんもいい人、
わりと働きやすい環境です。
ただ、刺激が少ないこと、何か新しい仕事に
チャレンジしてみたいこと…
さまざまな理由で「そろそろ辞めようかな…」と
思い始めています。
そして、半年後に辞めることにしました。
さてその半年間、どのように働きますか?
普通の人は、これまで通り無難に仕事をこなす、
あるいは気が抜けて、ダレてしまうかもしれません。
でも「すごい人」はここからが違います。
これまで働かせていただいたことに感謝して、
何か恩を返したいと、これまでの倍働きます。
これまで以上に店内をキレイに掃除して、
乱れたバックヤードの整理をする、
お客様への声かけ、接客もさらに丁寧に、
新規の商品展開のアイデアも出す、
最後の日に向けて、ひとつひとつの業務を
ていねいに、感謝の気持ちでこなす。
もちろん時給は変わりません。
しかも半年後には職場を去ります。
多くの人は「倍働く」ことの意味すら
わからないかもしれません。
でも「すごい人」は知っているのです。
「仕事は去り際が最も重要だ」
ということを。
■ピアノの教室を離れる
これは、ピアノの先生も同じでしょう。
たとえば、ある先生が楽器店や外部教室の
講師として勤めているケースを考えてみます。
その先生は、諸事情でどうしても
「1年後」に教室を離れなければならない。
つまり「退職」を考えています。
このとき、その先生には2つの働き方があります。
【1】どうせあと1年なんだからと力を抜いて働く
【2】教室への恩返しとこれまで以上に全力で働く
さて、あなたならどちらでしょうか?
もちろん【2】ですよね。
その根底には、感謝の気持ちもありますが、
あと1年だからこそ、これまで以上に努力する。
引き継ぎの先生が、安心してレッスンできるように、
できる限り生徒を育て上げるよう努力する。
教室のスタッフの方には、これまで以上に
思いやりを持って、ていねいに笑顔で接する。
講師の指導法の研究発表会では、念入りに研究した
結果をレジュメにしたためてのぞむ。
発表会やイベントの準備では、積極的に手伝い、
人が嫌がる仕事でも引き受ける。
練習時間が取られる伴奏の仕事も、
生徒の実力を引き出すために、全力で取り組む。
生徒や保護者の方には、これまで以上に、
気持ちを込めて向き合う。
もちろん、それで給与が上がるわけではありません。
周囲からの評価を上げたいわけでもありません。
そうではなく「心からそうしたい」から自然とそうなる。
きっと、決してお金では手に入れられないものが、
その先生には残ることでしょう。
それが「何か」は、あえて言いません。
ただ「教室に残したもの」の大きさは、
次の仕事の成功に、確実に影響します。
そして、
次の仕事で残したものは、さらに次の仕事につながる。
それはいわば「生き方」です。
こう生きたいという思いです。
「あの人なら、どこでも何でも成功するだろうね」
思わず周りの人がそんなふうに思ってしまうような、
すべてのことにていねいで、全力で、ひたむきな姿。
その姿に、人は信頼を寄せ、応援してくれる。
そんな生き方、働き方のできる人間でいたい。
毎日が毎瞬が全力投球、ですね。
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