「あのね、今日ね、学校でね」

生徒がレッスン室に来るなり、挨拶もそこそこに、
今日あったことを先生に話し始める―

どのピアノ教室にもある、日常風景ですね。

考えてみると、自分の話を聴いてくれる大人は、
彼らにとってそれほど多くないかもしれません。

1対1の習い事は、それほど多くありませんし、

これほど長い年月を、一緒に過ごす大人も
他にいないのではと思うからです。

子どもたちは、話したいことがいっぱい。

聞いて欲しいことがいっぱい。

受け止めて欲しいことがいっぱいです。

それを、しっかり受け止められるのが、
ピアノの先生、と言えるかもしれません。

■自分の話を聴いてくれる人に…

ただ、話を聴くと言っても、
結構難しかったりします。

なぜなら、相手の心を中心にした聴き方、
「共感」をベースにしなければ、

生徒は嬉しくない、先生ちゃんと聞いてる?
みたいな感じになるからです。

そうなると、

「自分の話を聴かない人の話は聴かない」

みたいな悪循環が生まれるわけです。

先生の言うことは聞かない、
みたいになっては辛いですよね。

■聴くことがうまい先生

レッスンが巧みな先生は、
そのあたりを理解しています。

つまり、自分のいうことを伝えるためには、
自分が素晴らしい「聴き方」をしなければならない、

ということを知っていらっしゃるからです。

子どもたちの話を聴き、受け止めることが、
彼らの心の温度や気分を上げ、

それが今度は、彼らの聴く姿勢を作り、
レッスンの質を上げることを知っているからです。

たとえば聴く姿勢。

ピアノの向こう側で手帳を見ながら
生徒の話を聞いていたり、

相づちもせずに上の空だったり…

これでは、子どもたちの心も、
どこかに行ってしまいます。

いそがしくても視線だけは外さず、
うなずきと相づちで話を引き出す。

子どもたちは、話す内容もスピードも
それぞれ違います。

その子その子に合わせて、表情や
レスポンスのスピードも微妙に変える。

(いわゆる「ペーシング」というものですね)

■彼らが本当に伝えたいことは…

生徒が伝えたいのは「事実」というより、

そこで感じた「気持ち」だと知っていて、

「そうだったんだー!よかったね!」
「…そうだったんだ、それはつらかったね…」

みたいに寄り添う反応を返す。

つまり、ちゃんと話を聴いているという
メッセージを送りながら、

子どもたちの気持ちを受け止め、
それを伝えることをしているわけです。

それから「笑顔」です。

たとえば、能面のような表情の人には、
話すのを躊躇してしまうと思います。

こわいし、聞いてくれなさそう。

逆に、笑顔だったりほほえんでいる人には、
受け入れてくれそうな雰囲気があります。

つまり、顔の表情によって相手に「拒否」にも
「受け入れ」にも受け止められてしまうわけです。

だからこそ、顔の表情で聴いてるオーラを出して、
子どもたちの安心を引き出している。

■どの話も使える情報である

さらに、生徒の話をレッスンに活かす。

たとえば、さらっている曲が、
どうもその雰囲気が出ないとき。

「さっき話してくれた楽しい気分で弾いてみたら?」
「さっきの悲しい気持ちってどんな音になる…?」

みたいな感じでしょうか。

ただ子どもの話を聴いている、のではなく、

「今日のレッスンで使えるネタ(情報)を仕入れている」

という感覚なのでしょう。

どの時間も無駄にしない、どの話もレッスンに活かせる、
そういう姿勢を感じますよね。

■聴き上手はレッスン上手

もちろん、生徒の話を聴いてばかりでは
レッスンにならないわけですが(笑)

それでも、やっぱり共感や傾聴は
私たちにとって大切なスキルかと思います。

良好な人間関係の形成に必要ですし、
子どもたちの能力を引き出すために重要。

「聴き上手はレッスン上手」

とおっしゃっていた先生もいるくらい、
やっぱり大切なことですよね。

さて、今日のレッスン。

生徒さんから、どんなお話を引き出せるか…
とても楽しみです。

最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。

今日も素敵なレッスンを。

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