古典派のソナタでいえば、個人的には、
ハイドンの作品により好感を抱きます。
遊び心もありながら、ときに包み込むような、
ときに戒められるような……
そんな多様な感情や面白さを感じます。
ドイツ留学時代の修了演奏で弾いたのも、
ハイドンのC-durのソナタでした。
ラフマニノフのソナタも同時に取り組んでいましたが、
正直、巨人と格闘しているような大変さも。
そんななか、ハイドンの音楽と向き合う時間は、
自分にとって癒しの時間でもありました(笑)
今となっては懐かしい思い出です。
本日配信の教本メルマガからのご紹介です。
★「1冊3分で分かる!ピアノ教本マガジン」vol.343(2015年2月18日配信)より
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『 ソナタアルバム 1 New Edition 』 今村央子・平野昭・解説
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今日ご紹介する教材は、
です。
ピアノ学習者であれば必ず通る道、
といっても過言ではないこの曲集。
たくさんの版がありますが、今回のご紹介は
リニューアルされた新版のソナタアルバムです。
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◆今日のチェックポイント◆
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巻頭の「はじめに」から引用すると、
「作曲家の意図をできる限り忠実に読み取る上では、原典版や
批判校訂版と呼ばれる楽譜や自筆譜など様々な楽譜を比較検討
することが役に立ちます。しかし一方で、演奏者それぞれが情
報を取捨選択していくためには既に作品にある程度親しんで概
要を把握することが前提条件となり、手軽な作業とは言いがた
いのが現実です。本書は、そうした煩雑な作業を経ずに、身構
えることなく3人の大作曲家の作品と音楽に触れ、魅力の入り
口に立つことができる『最初の一冊』としての楽譜集を目指し
て編集しました」
収められているのは、ハイドンとモーツァルト、
ベートーヴェンの3人の作曲によるソナタ15曲。
巻頭には平野昭先生による「ピアノソナタの進化」
というソナタの多様性を解き明かす解説。
さらに、今村央子先生による全曲の楽曲分析と
解説が掲載されています。
特筆すべきは、楽譜のページに掲載されている、
「形式図」「調構成の見取り図」。
たとえば「形式図」では、
「第1主題C: /確保 推移1 C:→G: 第2主題 G:」
といった感じで、どの小節から何が始まり、
さらにその解説は何ページにあるかも掲載。
曲集の帯に「地図感覚で曲をナビゲート」とあるように、
今弾いている箇所の役割を知る良い手がかりになります。
巻末には、2014年に発見された「トルコ行進曲付き」
のKV331の自筆譜情報も掲載されています。
従来の版との比較もなされていて興味深いです。
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◆(2)作品を深く知る手がかりが散りばめられた新版
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私も小さい頃に、発表会やコンクールのために、
ソナタアルバムの作品を学びました。
よく覚えているのが、ハイドンの「Hob.XVI/37」や
モーツァルトの「KV283」ベートーヴェンの「Op.14-2」。
譜面を見るだけで、取り組んだのはどの年齢の
どの季節だったかまで思い出せます。
ただ今回の新版のような「形式」や「楽曲分析」については、
当時はほとんど理解していなかったように思います。
この点、丁寧な解説や分析のある版で学ぶことができる、
今のピアノ学習者は幸運と言えるでしょう。
(もちろん、ピアノ指導者による分かりやすい解説が
必須になることはいうまでもありません)
巻頭にある平野昭先生の解説で、
勉強になった部分を挙げてみます。
○「ソナタ形式」という尺度は後世の定義であって、
当該の作品が書かれた時代にはなかった
○ソナタ形式の基本構成が定義されたのは、ベートーヴェン
が亡くなってから10年近くを経た1830年代半ば
○今日ピアノソナタと呼んでいるハイドンの作品の
多くがチェンバロでの演奏を想定していた
○ベートーヴェンのソナタ全37曲(作品番号のないものを含む)
の創作期は、ソナタ形式上の特徴から7つの時期に分けられる
また、共感したのは巻頭の「はじめに」にある、
音楽之友社による文章。
「収められた作品に強く興味をもったら、ぜひこの楽譜を
出発点として他の版も参照してください」
私も、恩師から同じことを教わり学びました。
ピアノ作品を勉強する上で大切なのは、なるべく多くの意見を
自分に取り込み、そこから「自分の解釈」を導き出すこと。
世論と同じで、楽譜も版によって言うこともいろいろ、
書き方もいろいろ、解釈もいろいろです。
その玉石混交から本質を見出し、意義付けと価値づけを
繰り返しながら、自分の解釈として演奏すること。
そこにあるのは作曲家への畏敬の念であり、
自分の演奏への「責任」ではないかと感じます。
いずれにせよ、作品を深く知るためには多くの
手がかりがあるほうが有利なのは間違いありません。
今回の新版もその一つと言えるでしょう。
ご興味のある先生は、手に取ってみてください。
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『 ソナタアルバム 1 New Edition 』 今村央子・平野昭・解説
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