駅

私はこれまで2000人を超えるピアノの先生との
出会いをいただいてきました。

どの先生も素晴らしい方ばかりですが、
特に感銘を受けた出会いが数多くあります。

そして、そこから学んだことは数知れません。

自分への戒めと、少なからずの憧れを込めて、
このシリーズでは「気づき」を記していきます。

・・・

伝わる→わかりやすい言葉を選ぶ

一流のピアノ指導者が大切にすること。
それは「わかりやすく伝えること」です。

まだ言葉を話し始めたような小さい子から、
思春期の子、成人男性、自分より年上の人……

どんな人にも「わかりやすい言葉」を選び、
使い分けて話すことを心がけます。

具体的に話す→例えて話す

特徴的なのは「例え話がうまい」こと。

「音」という目に見えにくいものを扱うピアノのレッスン。

ともすると話が抽象的になりがち。
これでは話せば話すほど伝わりにくくなります。

だからこそ、何かに例えてイメージしやすくして、
「ああ、そういうことなのか」と腑に落とす。

例えるときに忘れてはいけない「あること」

ここで重要な点がひとつあります。それは、

「人は経験したことしか具体的にイメージできない」

ということです。

富士山の頂上からの眺めの感動は、
自分の足で登りきった人だけが味わえるもの。

毛足の長い、ふかふかのじゅうたんの柔らかさは、
実際にその上を歩いてみなければわかりません。

だからこそまずは、

「○○ってみたことある?」
「○○って触ったことある?」
「○○って行ったことある?」

こうした「外せない質問」をするわけです。

このときのポイントは、言うまでもなく、

「その人(子)が知っていそうなことを聞く」

そこから10倍伝わる例え話が可能になります。

実は伝えるのがうまいから一流ではなく…

「一流のピアノ指導者は、伝えるのがうまい」
というのは、実は、少し違います。

「これだけは何としても伝えたい」

そんな、教育者としての使命にも似た「熱い思い」
溢れているからこそ、伝えることへの努力を惜しまない。

そして「伝えることの難しさ」を誰よりも知っている

「ではどうすれば伝わるだろうか?」

この自問を常に繰り返し、アンテナを10本も20本も張って、
伝わるフレーズ、伝わる例えを、日々探し求める。

伝えるのがうまいから一流のピアノ指導者、ではなく、

「伝えたいことが溢れているから一流のピアノ指導者」

といえるのかもしれません。

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