おはようございます。
株式会社リーラムジカ代表取締役の藤 拓弘です。

今日ご紹介するのは、

「2018年問題とこれからの音楽教育」

という書籍です。

いつもはピアノ曲集や教材をご紹介していますが、
今回はちょっと違った角度からの書籍のご紹介。

著者は、東京学芸大学教授を経て、現在は国立音楽大学の
理事・副学長を務めていらっしゃる久保田慶一先生。

音楽教育やキャリアという、ピアノの先生であれば
見逃せないテーマを扱った書籍です。

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◆今日のチェックポイント◆
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巻頭の「はじめに」からご紹介すると、

「32年間、教育学部と音楽学部で教鞭をとってきた私にとって、
教員養成系大学・学部から音楽芸術が消え、音楽大学の志願者が
減少しつつある時代にあって、音楽大学生向けの就活本の刊行が
歓迎される風潮は、きわめて危機的な現象に映ってしまうのです
(中略)私は、音楽を学ぶ意味、そして音楽を職業にする意味に
ついて、これまでの経験を通してもう一度考えてみたいのです」

とあります。また同じ「はじめに」に、

「本書が重要な視点としている」

こととして、

「人の人生(キャリア)が個人と社会の関係によって形成される」

という「単純な公式」を挙げながら、

「後悔しない人生を送るためにも、自分で納得のいく
意思決定ができるということが、とても重要」

としています。

東京学芸大学の改組の話題から始まり、
転換期を迎える日本の音楽大学について、

音楽教育の必要性や音楽大学の存在意義、
21世紀の音楽家のキャリア・デザインまで、

幅広い話題が盛り込まれています。

各章の終わりに細かな注釈がついており、
内容をより把握するのに役立ちます。

「あとがき」に、本書を著した理由として、

「音楽を愛し音楽を学んでいる若者たちに、
何かしらの『羅針盤』として役に立ててもらいたい」

とあります。本書をなるべく分かりやすい言葉で、
読みやすく書き上げていることも特筆すべきでしょう。

本書の内容を目次からご紹介してみましょう。

【プロローグ】「文系学部の廃止」の衝撃

【第1章】「文系廃止」より以前に「芸術系廃止」が始まっていた
【第2章】「転換期」の日本の音楽大学
【第3章】義務教育から音楽をなくしてはいけない理由
【第4章】「音楽大学卒」は儲かる、儲からない?
【第5章】音楽大学はなぜ必要なのか
【第6章】21世紀の音楽家のキャリア・デザイン─

【エピローグ】これからの音楽大学が目指すもの

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◆(2)音楽家としてのキャリアを見つめる価値ある一冊

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音楽大学の3~4年生になると直面する、

「卒業したらどうしよう?」

という先の見えないことから生じる不安。
音大生であれば、誰もが経験することでしょう。

大学院への進学や留学などで勉強を続ける、
という選択もありますが、それもいずれは終わります。

そこで重要になってくるのは、その後、
音楽を続ける続けないを含めて、

「将来のキャリア・デザイン」

をなるべく早く始めておくことでしょう。

ただ、それが簡単にできれば苦労しないわけで、
何らかの「指針」がなければ難しいことは事実。

その点本書は、音楽家としてどう生きるべきか、
といった深い内容に迫っている点において、

音大生や音楽の道を目指す若い人たちにとって、
心強い「羅針盤」になるでしょう。

また、そうした子を持つ親や、ピアノ指導者、
さらに音大関係者にとっても有益でしょう。

本書を読んで、心に残った部分は多いのですが、
いくつかご紹介してみます。

「これからは、日本でもリベラルアーツ型の
音楽大学が重要になってくる」

「18歳人口のピークは1992年で205万人、2014年には118万人」

「音楽大学で学びたい、将来クラシック音楽の分野で
仕事をしたいという人が減少している」

「クラシックの音楽家は社会と深く関わり、
自分たちの存在意義を社会に呼びかけていくことが大切」

「音楽が音楽として成立するには、
人間の脳の積極的な働きかけが必要である」

「あなたのやりがいは、あなたの
これまでしてきた努力でしか報われないもの」

「あなたの喜びは、あなたが得る
収入の額で測ることはできないはず」

「音楽のプロとは、音楽を社会に
『伝道』することを一生の使命にすると公言した人」

「実際に英語圏では日常会話でも、フリーランスの
音楽家の職業はプロフェッションと表現」

「音楽大学を卒業したことは、
プロフェッションの基礎資格を得たということ」

「音楽を教える仕事に携わるためには、
音楽大学で学ぶ経験が、絶対必要なのです」

「ソーシャル・エンゲージメントは、社会に関わり、
それによって社会に貢献する、という意味」

「ティーチング・アーティストとは芸術を教えるだけでなく、
芸術を通して人を教育することを、仕事の一部としている人」

「むしろ音楽家自身が『起業家精神』を培うことが、
いままさに急務となっている」

「若い音楽家は社会とつながることで成長します。
逆に言えば、社会が音楽家を育てる、と言える」

音楽を目指す人を指導する立場のピアノの先生も、
ぜひ読んでおきたい一冊。

ご興味があればお手に取ってみてください。

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『 2018年問題とこれからの音楽教育 』  久保田 慶一・著

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◆(3)編集後記

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今回ご紹介した書籍に、東京学芸大学の改組の
話題がはじめのほうにありました。

私も学芸大学の修士課程で学んだ人間として、
とても興味深く読みました。

また、これからの音楽大学にとって、
どのような考えと行動が必要なのか。

この点の提言もあり、なるほどと頷きました。

「若い音楽家は社会とつながることで成長する」

という点には同感です。ただ、そこに多くの
問題点があることも事実かと思います。

「音楽家自身が『起業家精神』を培うことが急務」

という言葉もありましたが、これは私も
ずっと前から思っていたことです。

自分としても何かできることはないか、
今後、考えていきたいテーマですね。

それでは最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

今日も素敵なレッスンを。

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