私は言葉の力を信じている人間の一人です。
言葉には人を動かす力があり、
逆に人を委縮させる力もあり、
人を幸せにする言葉もあれば、
そうでない言葉もあります。
ピアノのレッスンも、言葉で伝える職業であれば、
言葉を磨くことも、指導者として大切なのでは、
といつも思います。
「ピアノのレッスンは言葉で作られていく」
「言葉で子どもを育てていく仕事である」
実際の音や音色で伝えていくのはもちろんです。
けれども、レッスンのほとんどはやっぱり、
ピアノ指導者の「言葉」で作られている。
たとえば、生徒が一度弾いた後に、
「前よりひどいね、何度言っても直ってないじゃん。
何やってきたの?やる気ないならやめれば」
というのと、
「いいところもたくさんあった!とくにあの部分。
でもあそこをもう少し○○したらもっと良くなるよ」
というのとでは、生徒が感じるものは、
おそらく180度変わってくるでしょう。
■指導者の言葉で生徒が変わっていく
小さい子が弾くピアノも芸術だ、
と思える指導者がいます。
幼児がクレヨンで一生懸命に描いた絵に
芸術性を感じることと同じ感覚でしょう。
そういう先生が、子どもにかける言葉と、
「下手だな」としか感じない人がかける言葉とでは、
おそらく、質も影響力も大きく違ってくるでしょう。
ピアノのレッスンで面白いのは、
「美しい言葉で伝わると、生徒の演奏も美しくなる」
「貧しい言葉で伝えると、生徒の演奏も貧しくなる」
食べ物と同じなのかもしれません。
子どもに栄養価の高いものを食べさせるのか否かで、
身体の成長やバランスも変わってくる。
だからこそ指導者の言葉も、
なるべく栄養価の高いものを選ぶ。
■アクティブにならないと見つからない
ただ、栄養価の高い言葉というのは、
意外と見つけるのが難しいものです。
探検とか冒険の宝探しのように、
積極性と好奇心がどうしても必要です。
家にずっといるだけでは見つかりにくいんですね。
他の芸術に触れるとか、美しい詩を読むとか、
息を飲むような景色に会いにいくとか、
言葉の美しい人と会話するとか、
偉人の伝記や文学と言われるものを読むとか、
つまり、アクティブにならないと難しいわけです。
学びは移動した距離に比例する、とか言われます。
ものを動かすと、目の前の現実が変わるように、
自分を変えたければ、自分を動かすしかない。
動かなければやっぱりそのままですから。
■感性が鈍ってきたなと感じるとき…
芸術と教育に携わる者として、いいものに触れるべき、
というのは間違いないと思います。
私も感じますが、生徒の微妙な音のニュアンスが
聴き分けにくくなってきたな…
と思うときには、心に必要な栄養素が
きちんと摂取できていないときと重なります。
そういうときは動く。
いいものを求めて動く。
レッスンを磨くためには、感性を磨く、
と言われるのはそういうことでしょう。
■贈物にはセンスが必要
指導者が何を感じ、何を伝えるかによって、
生徒の何年後かが決まっていくという不思議さ。
そして、それが面白さでもあると思います。
言葉は、ひとつの贈物だと思います。
そう考えると、ピアノの先生は、
毎回のレッスンで生徒に贈物をしている。
そう考えてもよさそうです。
贈物にはセンスが必要なのと同じように、
ピアノを教える人間として、言葉と感性を
磨いていくことは大切なことだろう、
そんなことをいつも思ったりしています。
最後までお読みいただき、
ありがとうございました。
今日も素敵なレッスンを。
いつも本当にありがとうございます。
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