■昔感じた妙な陶酔感…
ドイツ留学から帰ってきた頃、
私は、自分の足で立つために、
かなりもがいていました。
どんな小さな仕事も、
有り難く受けて努力しました。
ピアノを教えることも増えて、
おかげさまで忙しくなってきました。
「忙しい」ことは、いいことだ。
あの友人は、あれだけ忙しく仕事をしている。
自分も、もっともっと「忙しく」ならねば。
スケジュールを詰め込み始めました。
手帳のスケジュールを埋めるたびに、
自分の「存在価値」というスタンプを押せているようで、
よく分からない陶酔感があったように思います。
もちろん、それなりに充実感はありました。
でも、何かが違う。
あるとき気づきました。
「大事なことは、空白に生まれる」と。
■空きがあると…
忙しくしていると、頭も心もいっぱいになります。
容量がいっぱいで、動きが悪いパソコンのように。
そして、本当に大事なこと、チャンスが来たときに、
「空き」がないと入れられないんですね。
そもそも、頭がいっぱいだと、
チャンスだとすら気づけないことも。
仕事で成功しながら、人生を楽しく生きている人は、
上手に「空き」を作っている。
空きがあると、余裕が生まれる。
目の前に乗り物が来たときに、サッと乗り込める。
チャンスは、空きがあるから舞い込む、
とも言えるわけです。
■たくさんいる中の一人、ではなく…
忙しくしていてこわいのは、
「大切なこと」が見えにくくなること。
テレビを2倍速で観ていると、
細部が見えなくなるみたいなイメージで、
目の前の人がきちんと見えなくなってしまう。
ピアノのレッスンも同じですよね。
心に余裕がないと、
ひとり一人が見えにくくなってしまう。
でも、ピアノのレッスンは、
「どれだけひとり一人を細部まで見れるか」
というところが勝負なわけです。
たくさんいる中の一人、ではなく、
たくさんいても、たった一人の生徒、
という向き合い方が重要なわけです。
そのためにも、心の余裕、空きの部分は、
意識して作らなければならない。
レッスンでつまづいたときに、
ようやく、そのことに気づきました。
■先日みたニュースで…
あるニュースを見ました。
新型コロナウイルスの影響で、学校は休校。
そこで、学校と自宅を結ぶ、
オンライン授業に切り替えた。
とてもスムーズにうまく授業できたそうです。
でも、その先生は気づきました。
学校生活で大切なのは「余白」だったんだと。
オンライン授業はとても効率的だけど、
生徒たちもすごく集中するんだけど、
そこに余白がない、余計な時間がない。
学校に行けば、休み時間に子ども同士で
おしゃべりしたり、校庭で遊んだり、
そういう時間がある。
子どもたちにとっては、まさに
そういう「余白」の時間が大切で、
それが本当の「成長」につながっているんじゃないかと。
■レッスンも人生も…
ピアノのレッスンで大切なのは、
子どもたちと心を通わせること。
(そもそも音楽は、心を通わせることですよね)
そこに、ピアノを教えることの
本質があるように思います。
子どもたちとの何気ない会話や、
ちょっとした表情の変化、仕草、
生徒の成長のために、必要な「何か」に
気づくことができるためにも、
私たちの「心のあり方」がとても大切になってきます。
大事なのは、いつも目の前。
レッスンも人生も「余白」を大切に、
目の前の生徒、目の前のことに、
ていねいに向き合っていきたい、
そんなことを、あらためて考えました。
お忙しいなか、最後までお読みいただき、
本当にありがとうございました。
今日も素敵なレッスンを。
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